2024年度リニューアル後の英検1級英文「要約」サンプル問題を徹底解説!【解答例付き】

英検問題形式リニューアルの内容とは?

日本英語検定協会は2023年7月6日に2024年度第1回英検から、出題の一部を改訂するとの発表を行いました。

参照元:実用英語技能検定(英検)の問題形式 一部リニューアルのお知らせ

改訂内容で一番大きな変更と言えば、1級~2級のライティングにおいて、従来の「意見論述」問題に加えて、英文の「要約」問題が追加されることではないでしょうか?

英文の要約に関する出題は大学入試においてもほんの一部の大学が扱うのみであり、経験がない受験者が大多数だと思います。そこで当記事では英検協会から発表があったサンプル問題の中から、1級の「要約」問題を実際に解いた上で、「要約」問題に取り組む際に必要な考え方を紹介します。

サンプル問題の紹介

こちらが英検1級のWriting分野で出題される「要約」問題のサンプル問題です。

以下の英文を90~110語に要約しなさい ※実際には問題文も英語で出題

 Poyang Lake is China’s biggest freshwater lake. Although people have fished it for generations, these days, a new resource is being removed – sand. Up to 10000 tons of sand are dug up from the lake floor per hour, making this the world’s largest sand mine. Much of the sand is shipped to Shanghai – a city whose population has risen by 7 million since 2008 – where it is used in the construction of high-rises, roads and other structures. Massive mining operations exist not only in China but also in other nations, including Australia and the United States. Globally, the largest importer of sand is Singapore. Which has used the resource to increase its territorial landmass by 20 square miles.

 The consequences of sand mining are a major concern. Removing sand from water bodies increases water sediment, blocking out sunlight; this interferes with underwater plants’ production of oxygen, making survival for fish and other organisms difficult. In the case of Poyang Lake, sand removal has made the channels leading out of the lake much deeper and wider, doubling the amount of water flowing outward. Consequently, the lake’s water level had dropped dramatically. This threaten the water supply to neighboring wetland, which are home to numerous bird species and other wildlife.

 Many countries are becoming increasingly aware of the damage caused by sand mining. Demand for the resource has taken a toll on Indonesia, and Cambodia, which have banned sand exports in efforts to preserve local ecosystems. However, increasing demand means that when mining stops in one area, other areas take on the burden of supply. China’s Yangtze River, for example, was formerly a major sand-mining site, but by the late 1990s so much had been removed that bridges collapsed along with large sections of the riverbank. Whan sand mining was banned on the Yangtze in 2000, operations shifted to Poyang Lake.

出典元:実用英語技能検定(英検)の問題形式 一部リニューアルのお知らせ 「要約」問題出題例 1級

日本語訳(DeepLを基に当ブログで一部修正)

 中国最大の淡水湖である鄱陽湖。人々は何世代にもわたってこの湖で釣りをしてきたが、最近では砂という新たな資源が採掘されている。湖底から掘り出される砂は1時間に1万トンにものぼり、世界最大の砂鉱山となっている。砂の多くは、2008年以降人口が700万人増加した上海に運ばれ、高層ビルや道路などの建設に使用される。大規模な採掘事業は中国だけでなく、オーストラリアやアメリカを含む他の国々にも存在する。世界的に見て、最大の砂輸入国はシンガポールである。シンガポールは、この資源を利用して領土を20平方マイルも拡大した。
 砂の採掘がもたらす結果は大きな懸念事項である。水域から砂を取り除くと水中の堆積物が増え、日光が遮られる。これは水中植物の酸素生産を妨げ、魚やその他の生物の生存を困難にする。鄱陽湖の場合、砂の除去によって湖から流れ出る水路がより深く広くなり、流れ出る水の量が倍増した。その結果、湖の水位は劇的に低下した。その結果、湖の水位は大幅に低下し、多くの鳥類や野生生物が生息する近隣の湿地帯への水供給が脅かされている。
 多くの国々が、砂の採掘による被害を認識しつつある。インドネシアやカンボジアでは、地元の生態系を保護するために砂の輸出を禁止している。しかし、需要が増加しているということは、ある地域で採掘が中止されると、他の地域が供給の負担を負うことを意味する。例えば、中国の揚子江はかつて砂の採掘が盛んな場所だったが、1990年代後半には多くの砂が取り除かれ、河岸の大部分とともに橋が崩壊した。2000年に長江での砂の採掘が禁止されると、操業は鄱陽湖に移った。

出典元:実用英語技能検定(英検)の問題形式 一部リニューアルのお知らせ 「要約」問題出題例 準1級 を和訳

元の文書は312語であるため、90~110語に要約するためには英文を約3分の1の長さにする必要があります。

Male worker with bulldozer in sand quarry

解答のための考え方

英文の内容を整理してみよう

まずは英文の内容を段落ごとにまとめてみましょう。

各段落で述べている内容を簡潔にまとめると以下の通りになります。

第1段落 砂採掘の実態について(導入文)

  • 中国の鄱陽(ハヨウ)湖の砂採掘で得られた大量の砂は上海の建設事業に使われている。
  • 中国以外の国でも砂採掘は行われている。一方でシンガポールは大量の砂を輸入している。

第2段落 砂採掘の環境への悪影響について

  • 砂採掘により水中の酸素が減少し魚や他の生物の生存が困難になる。
  • 砂採掘により湖の水位が低下し、湿地帯の生態系を脅かしている。

第3段落 砂採掘の規制について

  • インドネシアやカンボジアでは地元の生態系を守るために砂の輸出を禁止している。
  • 需要が高まる中、特定の地域で砂採掘を中止しても、結局他の地域が負担を負うことになる。

第1段落で砂採掘の実態について取り上げ、その後、第2段落で砂採掘の環境への悪影響、第3段落で砂採掘の規制とその難しさが述べられていることがわかります。

要約問題も段落に従って「導入文⇒問題点⇒今後の課題」の流れに沿って作成するとよいでしょう。

英文を要約するために必要な事

ここでは1級の要約問題に取り組む上で留意すべきことを解説します。

英文を要約するために必要な基本的な知識については下記の準1級サンプル問題解説記事をご確認ください。

英検1級の要約問題は準1級や2級の要約問題と比較して語数以外に以下の点が異なると思われます。

  • 賛成意見と反対意見という単純な構造になっていない
  • 具体的な名詞が数多く使用されている。
  • 主張が直接述べられていない部分がある。

それぞれの項目について簡単に説明します。

賛成意見と反対意見という単純な構造になっていない。

準1級や2級と異なり、本文の内容が第2段落が賛成意見、第3段落が反対意見という単純な構造になっていません。そのため本番の試験でも少し本文の趣旨をつかみにくくなっている可能性があります。

しかしながら段落ごとに内容をまとめること自体は有効なため、試験中にも積極的に行っていきましょう。

具体的な名詞が数多く使用されている。

英検1級の要約問題では具体的な地名や国名(中国、シンガポールなど)が多く使用されています。

今回の内容であれば90~110語は要約として比較的語数に余裕があるため、いくつかの固有名詞を直接引用することも可能でしょう。

ですがその際は段落ごとの語数のバランスを考えて、引用文にその名詞を本当に採用する必要があるか考えてみましょう。

主張が直接述べられていない部分がある。

第3段落では中国政府が揚子江での砂採掘を中止したものの、結局砂採掘の中心地が揚子江から鄱陽湖に移っただけであることが述べられています。

つまり著者は需要がある限り砂の採掘を全世界的に停止することはほぼ不可能であることを暗示しているのです。

英検1級の要約問題ではこのように主張が少し回りくどい文章が採用される場合があるため、本文を読む中で本筋を見失わないように気をつけましょう。

サンプル問題の解答例

英文の内容と要約に必要な知識を理解した上で、サンプル問題の解答例を確認してみましょう。残念ながら英検協会より解答例の公表は無いため、AI(ChatGPT)が作成した解答例と当ブログで作成した解答例の二つを紹介します。

解答例 (AI(ChatGPT)が作成)

ChatGPTに110語以内でサンプル問題を要約させた文章です。

Poyang Lake, China’s largest freshwater lake, faces severe sand mining, extracting up to 10,000 tons per hour and becoming the world’s largest sand mine. Much is transported to Shanghai, fueling its construction surge amid a population increase of 7 million since 2008. This global mining trend extends to nations like Australia and the United States. Singapore, the leading global sand importer, expands its landmass by 20 square miles.
The environmental impact is significant, disrupting water bodies, blocking sunlight, and threatening aquatic life. Poyang Lake experiences channel deepening, affecting water flow and endangering nearby wetlands.
Despite growing awareness and sand export bans in some countries, rising demand persists, seen in the shift from China’s Yangtze River to Poyang Lake. (118 words)

ChatGPTに90語以上110語以下での要約をお願いしましたが、なぜか何度指示しても110語を超える要約文が作成されてしまいました。

ChatGPTは国名や数値などの具体的な要素を出来るだけそのまま採用する傾向にあり、第1段落の分量が他に比べて多くなっています。

また要約という面では、元の文章を短くなるように加工しているだけであり、文章全体で伝えたいことがまとめられていないという問題点があります。

解答例(当ブログで作成)

英検1級受験者が使える語彙や言い回しを用いた上で、サンプル問題の文章の趣旨を要約した解答例を紹介します。

Sand mining in China’s largest lake supplies construction material, with a significant amount used in Shanghai. Besides China, other nations engage in large-scale mining and cities metropolitan areas such as Singapore consume their sand in large quantities.
However, this practice has adverse effects on the local environment. The process leads to oxygen depletion, organism mortality, and disruption of water supply to the adjacent wetlands around the lake.
While some countries enforce bans on sand exports to curb environmental damage, complete abolition proves challenging due to escalating demand. Even with government restrictions in specific areas, eliminating sand mining entirely remains nearly impossible.
(101 words)

第1段落では、砂採掘が中国最大の湖で行われ、その大部分が上海で使われていることを示しています。また中国以外でも大規模な砂採掘がおこなわれ、シンガポールのような大都市でその砂が大量に消費されていることを記載しています。

第2段落では砂採掘が環境へ与える悪影響を簡潔に記載しています。具体的には酸素不足による生物の死滅、湿地帯への水供給の枯渇などがあります。

第3段落で、いくつかの国が砂の輸出を規制しているものの、結局都市化による需要の高まりにより砂採掘の完全なる禁止はほぼ不可能であることを述べています。

※上記解答例は当ブログ独自で作成しており、英検協会から正式に発表されたものでは無いため、満点を保証するものではありません。

(追記)2023年12月7日に英検特設サイトで公式解答例が公表される予定です。

まとめ

英文の「要約」問題で高得点を取るためには、元の英文で骨子となる意見を抽出した上で、語数制限に収まるように表現を書き換える必要があります。また1級の問題では文章の内容の理解が少し難しく、ある程度の読解力や速読力も求められるでしょう。

課題に合わせて自分の意見を答える「意見論述」問題とは異なる英語力が試される出題になりそうです。

「要約」問題含む2024年度からの英検の変更点や、「要約」問題の勉強法について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

おまけ:鄱陽(ハヨウ)湖についての補足知識

砂はビルや道路の建設には欠かせないセメントやコンクリートの材料として使用されます。世界の砂消費量は年間400億トン以上と川が運ぶ堆積物の約2倍という膨大な量となっています。

実際に鄱陽湖における砂採掘による地形の変化は著しく、衛星写真から見てもその影響の大きさを一目で確認することができます。鄱陽湖の北部では湖の表面積が1996年には96平方kmであるのに対し、2009年には164平行kmと70%も拡大したとの調査結果もあります。

一方中国においては台湾近海における違法な砂採掘により台湾政府に拿捕される事件が発生するなど、今後都市化が進行するに従い砂を巡る争いが発生する可能性もあります。

参考文献(英語):Devoured: How China’s largest freshwater lake was decimated by sand mining.

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