英検1級に合格しても意味がないと言われる理由【完璧な英語資格は存在しない】

年間400万人以上が受験する英検は、日本人に最も馴染みが深い英語資格ではないでしょうか?

学生にとって最も受験しやすい試験であり、かつ工業英検や観光英検のように特定の分野に偏りがないため、スタンダードな英語力を証明するために最も用いられる試験の一つです。

特に1級は英検の中でも最高峰の難易度を誇る試験として、英語学習者の中でも憧れを抱く人も多い資格の一つです。

しかしながら、人によっては英検1級に合格してもあまり意味がないと言われたことがあるのではないのでしょうか?

この記事では英検1級を目指す意味がないと言われる事がある理由と、本当に英検は英語学習者にとって意味がない資格なのかについて考えていきます。

英検1級に合格しても意味がないと言われる理由とは?

一般的に英検1級に合格しても意味がないと考えられる理由は大きく分けて以下の2つが考えらます。

  • 資格としての効力があまりない
  • ネイティブスピーカーのようには英語が使えない

それぞれの理由についてもう少し詳しく解説します。

理由① 資格としての効力があまりない

英検は日本でも知らない人がいないレベルで有名ですが、残念ながら合格しても就職が著しく有利になったり、独立開業に直結する資格ではありません。

独占業務がない

医師や公認会計士などの独占業務を有する国家資格と異なり、英検などの民間資格は合格者が一定のスキルを有すること証明するに過ぎません。

そのため英検1級に合格しても独占業務に従事できたり、特別な権利を有したりする事はほぼありません

キャリアパスを明確にしたい人や特定の業務に就きたいと考えている人にとっては英検はあまり価値がないでしょう。

学生が受験する試験だと思われている

2022年度において英検は毎年420万人の受験者を誇る、日本最大級の資格試験ですが、受験者の内学生以外の受験者は50万人程度と全体の2割強しかいません

また日本の就職市場や昇進条件においても、TOEICの点数を基準にする企業は存在しますが、英検の結果を考慮する企業は塾・教育産業を除いてほぼありません。

このような理由で社会人の間では、英検は他の英語資格よりも低い評価を受ける場合が多くなっています。

更新制度がない

英検には、他の英語資格と異なり明確な有効期限が設けられていないため、一度合格すれば講習を受講したり再度試験を受けたりしなくても一生涯資格は有効です。

ですが資格が有効である事と英語力が維持されている事はイコールではありません。

そのため英検1級に合格した後に、英語学習を怠れば、資格に見合う英語力がない人になってしまう可能性が高いでしょう。

孫娘
孫娘

おじいちゃん英検1級持っているんでしょ。英語で自己紹介してよ!

おじいちゃん<br>(1級ホルダー)
おじいちゃん
(1級ホルダー)

確かに昔合格したけど、30年前だからのぅ。今はすっかり忘れてしまったわい!

資格がなくても英語を話せる人はいくらでもいる

帰国子女のように幼少期から高い英語力を身に着けている人は、そもそも資格で自分の英語力を証明しようと考える人は少ないでしょう。

また当然ですが、英語圏で生まれた人であれば誰でも英語が話せるのですから、英語圏で英語の資格を持っていてもあまり効果がないと考えられます。

理由② ネイティブスピーカーのようには英語が使えない

英検1級を取得しても意味がないと言われるもう一つの理由として、合格してもネイティブスピーカーと同じように英語力を使える人が少ないことがあります。

具体的にはネイティブスピーカーの英語力と比較した、ギリギリで英検1級に合格した人の英語力の弱点として次の4つが挙げれます。

  • 取り扱われる語彙に偏りがある
  • スラングや口語表現が出題されにくい
  • リスニングの音声がきれいすぎる
  • 4技能すべて出来なくても合格できる可能性がある

取り扱われる語彙に偏りがある

英検には出題される語彙には一定の傾向があります。

英検1級を受験したことがない方でも、英検1級の大問1で出題される語彙問題は非常にレベルが高いことを知っている人は多いことでしょう。

しかしながら、英検1級に出題される語彙は、政治・経済・科学などの比較的堅いテーマが中心であり、具体的な名詞や小説に登場するような叙述的な語彙が出題される頻度はあまり多くありません。

そのため英検1級の語彙を学習した人であっても、身近にある物の英語表現を知らなかったり、洋書や海外ドラマのちょっとした言い回しに引っかかったりする事が多いはずです。

英検対策以外でも、洋書を読んで知らない単語を吸収する、身の回りの出来事を英語に訳してみるなどのトレーニングが必要となります。

◎ 英検1級によく出題される語彙の例 

 stipend(給付金) pseudoscience(疑似科学) などの政治・経済・科学系の抽象名詞

 furtive(こそこそした) torment(苦しめる) などの表現豊かな動詞や形容詞

△ 英検1級に出題されにくい語彙の例 

 cootie(シラミ) kerosene(灯油) などの具体的な名詞

 goody two shoes(いい子ぶるやつ) son of a gun(なんてこと!)などの口語表現

× 英検1級に絶対に出題されない語彙の例

 stoner(マリファナ中毒者) screw it (くたばれ!) などのスラング・下品な表現

スラングや口語表現が出題されにくい

英検は文部科学省後援かつ教育的な要素がある試験であることもあり、アカデミックなテーマや比較的お堅いテーマが多く扱われます

一方で映画やドラマで登場するような口語表現や、恋愛・犯罪などに関するスラングが試験で取り扱われることはほとんどありません。

また試験の中で、ネイティブスピーカーが暮らしている国の文化や流行を把握しているか確認されることはありません。

そのため英検1級合格者であっても映画やドラマを見てネイティブスピーカーと一緒に笑ったり泣いたりする事は非常に高い壁となるでしょう。

リスニングの音声がきれいすぎる

英検のリスニングはスタジオで録音された音声が使用されているため、普段の生活で話される英語よりもクリアで聞き取りやすいです。

1級と準1級のPart3で出題されるReal-Life問題でも実際に雑踏の中にいる時や大人数で会話している時のような聞き取りにくさはないでしょう。

つまり英検1級のリスニングで高得点が取れた人でもニュースなどのクリアな英語は聞き取れても、パブや電車の中など騒音が大きい環境やネイティブスピーカーが複数人で会話する状況には対応できない可能性があります。

もちろん英検1級のリスニングは、会話のスピードや分量、語彙レベルにおいて他の級を大きく上回っているため、中途半端なリスニング力で対応できる試験ではありません。

4技能すべて出来なくても合格できる可能性がある

英検は4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)をバランスよく出題する試験であるとされていますが、実際にはスピーキングを除く3つの技能については、いずれか一つのスキルで高得点を取得すると、他の技能の得点率が50%以下であっても合格できるケースがあります。

特にライティングで素点30点以上(32点満点中)の高得点を獲得できれば、CSEスコアと呼ばれる換算点が大きく伸びて、他のスキルの素点にあまり左右されずに比較的容易に一次試験を突破できるでしょう。

そのため同じ英検1級合格者であっても4技能のレベルに大きな偏りがある人も一定数存在します。

英検1級に合格しても意味がないのは本当か?

ここまで英検1級に合格しても意味がないと言われる理由について説明しましたが、ここでは逆に英検1級に合格することにより得られるメリットについて紹介します。

ノンネイティブスピーカー同士の会話なら優位が取れる

ネイティブスピーカー同士の会話と異なり、ノンネイティブスピーカー同士の会話は話す速度があまり早くない上、スラングや独特な口語表現が多用されることも多くありません。そのため英検1級レベルの英語力があれば語彙やスピーキング能力の面で他の人に後れを取ることは少ないでしょう。

英語で書かれた政治・経済関連の記事が読めるようになる

先ほど英検は堅いテーマが中心であると説明しましたが、そのテーマを最も活用できるのは、政治・経済関連の雑誌や新聞を読むときです。具体的には「The Economist」や「Foreign Affiers」などに掲載されている記事を読むことです。

これらの記事には英検1級の学習で習得した語彙が多く含まれているため、英検1級に向けた学習をした人としていない人では、理解度に大きな差が生じるはずです。

英語圏の英語系試験を受験する足掛かりとなる

TOEFLやIELTSなどの英語圏で開発された英語試験は、日本の英語教育カリキュラムと一致しておらず、教材や情報も少ないため対策しにくいのが実情です。

また英語圏に移住もしくは留学したい人を対象にした試験であることから、一定の英語力がないとそもそも全く歯が立たないことが多いです。

そのため、いきなりTOEFLやIELTSを受験するとそこで挫折してしまう可能性もあります。

そこで先に日本の英語教育カリキュラムの終着点ともいえる英検1級に合格することで、精神的にも英語力的にも余裕をもってTOEFLやIELTSに移行できることでしょう。

難関資格や難関大受験に挑戦する励みになる

Oxford University Pressの英語教員向けガイドによればTOEIC600点の人が900点を取得するための標準的な勉強時間は800時間としています。

つまり一般的な英語力の日本人が英検1級を取得しようとした場合は1000時間以上必要になることは容易に想像ができます。

英検と別の資格を一概に比較することはできませんが、1000時間以上勉強に費やして、合格率10%台と難関国家資格と並ぶ試験に合格した経験は、今後別の資格試験や大学受験に挑む時に大きな励みになるでしょう。

また英検に合格するために必要な努力や勉強法の工夫のしかたはきっと他の試験でも役に立つはずです。

まとめ

今回の記事では英検合格のメリットとデメリットの両方について解説しましたが、実際に英検1級に合格して意味があるのか、それとも本当に意味がないのかは、合格後の資格や英語力の使い方に大きく左右されます

資格を単なる就活やマウンティングの道具として捉えている人にとって英検1級はあまり意味がない資格ですが、英語学習のマイルストーン(指標)にしたい人や英検1級を踏み台にして他の難関資格に挑戦したり、英語を使った活動を始めたりしたい人にとっては大きな意味を持つ資格になることでしょう。

これから受験を予定する人は、合格後どちら側の人間になるか考えてみるとよいかもしれません。

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