多読の一環でGraded Readersを沢山読んだけど、一冊あたりの値段も高いし、なんか英文の表現が単調なんだよなぁ…。そろそろ原著のペーパーバックを読んでみたいけど、僕の英語力でも最後まで読めるかな?
ベットやソファーでくつろぎながら洋書を読むことは英語を勉強する人なら一度は憧れる目標の一つでしょう。しかしながらネイティブが読むペーパーバックは単語や文法が難しいことからGraded Readersなどの学習者向けの洋書を読んでいる人も多いのではないでしょうか?
そこで気になるのが、学習者向けの洋書を卒業して、原書いわゆるペーパーバックを読み始めるタイミングではないでしょうか。
いったいどのくらいの英語力になればGraded Readersからペーパーバックに乗り換えることができるのか、その大まかな目安を100冊以上の洋書を読んでいる私が徹底解説します!
Graded Readersとペーパーバック(原書)の違い
まずはGraded Readersとペーパーバックの違いについて整理しましょう。
結論から申し上げると、両者の違いは語彙、文法、英文の長さにあります。当然ペーパーバックの方が難しい語彙・文法が使われており、かつ英文の長さも大学受験などとは比較にならないほど長くなっています。
英語力が足りない状態でペーパーバックを読んでも間違いなく歯が立たないでしょう。
Graded Readers | ペーパーバック | |
---|---|---|
語彙 | ペーパーバックよりも簡単な単語に置き換えられている。巻末に語彙のリストが記載されている事がある。 | 学習者への配慮がないため、児童書であっても英検1級を超えるレベルの単語が平気で使われることもある。 |
文法 | 一般的な中学や高校で習う英文法を使用している。レベルにより使用する文法を制限している。 | 倒置や省略表現を効果的に用いている。またクジラ構文など難易度が高い定型文も使用されている。 |
英文の長さ | 数千語~2万語程度まで。ストーリーの肝になる部分だけを抜粋している。 | 児童書なら数万語、大衆小説なら10万語を超えるものも少なくない。 |
ペーパーバックを読む英語力の目安
ここからはペーパーバックを読むための英語力の目安について、資格・語彙力・文法力・読解速度の面から紹介します。
ペーパーバックを読む目安 英検やTOEICと比較
初めに英語関係の資格からペーパーバックを読むための英語力を確認しましょう。
ペーパーバックの中でも児童書(WonderやHoles)などを読み始める目安は英検準1級またはTOEIC 750点以上です。
また社会人が読むようなペーパーバック(1984やBULLS*IT JOBS)などを読み始めるには最低でも英検1級またはTOEIC900点以上が必要です。
TOEICで高得点を取ったり、英検の上位級に合格したりすれば、すぐにペーパーバックをスラスラ読めることを保証するものではありませんが、おおまかな目安になるでしょう。
※上記の基準を満たしている人でもリーディングパートの点数が著しく低い人は、一つ下のレベルから挑戦した方がよいでしょう。
英検/TOEIC | ペーパーバックの目安 |
---|---|
~英検準2級 | 絵本・幼児向けのショートストーリー ※大人であればまずはGraded Readersを読むことをおすすめします。 |
英検2級/TOEIC500 | 簡単なビジネス書(Who Moved My Cheeseなど) |
英検準1級/TOEIC750 | 児童書(Wonder/Holesなど) |
英検1級/TOEIC900 | YA向け/簡単な大衆小説(Robot in the Gardenなど) |
準ネイティブレベル | 大衆小説/ノンフィクション(1984/BULLS*IT JOBSなど) |
しかし資格だけでは自分が本当にペーパーバックを読破できるのか難しい人もいるでしょう。
このような場合は、ご自身の語彙力、文法力、読解速度から判断する必要があります。
語彙力:ペーパーバックを読める語彙力は8000語レベルから
ペーパーバックの中でも、児童書など比較的簡単な本を読むために最低限必要な語彙力は8000語レベルです。
しかし同じペーパーバックでも大人向けになればなるほど難しい表現が出現する頻度が増えていきます。
実際の語彙レベルを実感できるように、実際に対象年齢の異なる三つのペーパーバックの冒頭の文章および必要な語彙力を確認してみましょう。
Wonder (YL 5.0 小学生高学年向け)
I like when Mom tells this story because it makes me laugh so much. It’s not funny in the way a joke is funny, but when Mom tells it, Via and I just start cracking up.
Wonder ーR.J. Palacio
- crack up ―爆笑する (Weblio レベル10)
登場人物が子どもたちなので、非常に読みやすい表現が多いです。英検1級レベルの難しい単語は数ページに1個程度と比較的少なく、またストーリーの理解に直接影響を与えるものではないため、大まかな話の筋を理解するのに辞書は必要ありません。8000語レベルの語彙力があれば読書を楽しむことが出来ます。
Looking For Alaska (YL 6.5 中高生向け)
Although I was more and less forced to invite all my “school friends”, i.e. the ragtag bunch of drama people and English geeks I sat with by social necessity in the cavernous cafeteria of my public school, I knew they wouldn’t come.
Looking For Alaska ―John Green
- ragtag ー下層の、みずぼらしい (Weblio レベル21)
- cavernous ーガランとした (Weblio レベル15)
主人公がちょっと気取った高校生となるためWonderと比較して難しい単語が数多く使用されています。英検1級もしくはそれを超える難しい単語が1ページに1個以上出現するため、ある程度の語彙力が求められます。12000~15000語レベルの語彙力があれば何とか読破することができるでしょう。
1984 (YL 7.5 社会人向け)
Inside the flat a fruity voice was reading out a list of figures which had something to do with the production of pig-iron. The voice came from an oblong metal plaque like a dulled mirror which formed part of the surface of the right-hand wall.
1984 ーGeorge Orwell
- pig-iron ―銑鉄 (Weblio レベル24)
- oblong ―楕円の (Weblio レベル16)
オーウェン氏の考える監視社会の重苦しさを表現するため、多彩な表現が用いられています。英検1級レベルもしくはそれを超える難しい単語が1ページに2~3個出現するため、英検1級合格者でも辞書が手放せない人は少なくないでしょう。このレベルの小説を楽しむには20000語レベルを超える語彙力が必要です。
文法力:ペーパーバックを読める文法力は高校レベルで十分
基本的には高校レベル(大学受験レベル)の文法が身についていれば苦戦することはありません。
具体的には以下のリストに挙げられることが出来る人は、一般的なペーパーバックで文法に苦戦することは少ないと考えられます。
- 書かれている英文の時制を概ね判断することができる。
- 意識して英文を読めば、倒置や省略などに気づくことができる。
- TOEIC L&R TestのPart5(文法問題)で安定して8割以上正解できる。
一部の古典小説や純文学などでは特殊な構文や代名詞が使われており、非常に難しい文構造を使用する場合があります。このようなペーパーバックに挑戦したい場合は以下の書籍を読んで英文解釈の能力を高める必要があるでしょう。
読解速度:ペーパーバックを読める読解速度は平均的な大学生の約2倍
ペーパーバックを楽に読むために必要な読解速度はWPM(1分間で読める語数)で換算すると160〜180語/分です。
これはTOEIC Testのリーディングパートを塗り絵せずに全ての問題に目を通して、5分くらい見直しが出来るレベルです。
そう言われてもピンと来ない人のために、ネイティブスピーカーや日本の平均的な大学生と比較してみましょう。
ネイティブスピーカーのWPMは300語/分と言われています。一方で日本の平均的な大学生のWPSは100語/分以下となっています。
つまりネイティブの様にスラスラ読書を楽しむことは難しくても、ある程度ペーパーバックを楽しむには、平均的な日本人の大学生の2倍近い読解速度が必要と言うことになります。
もちろんWPMが160〜180語/分に達していなくても、120~130語/分程度なら子供向けの総語数が少ない本やショートストーリーであれば読むことができるはずです。
読解速度(WPM) | 目安 |
---|---|
~100語/分 | 大学受験レベル/日本人大学生の平均 |
120~130語/分 | 難関大合格レベル/英検準1級レベル |
160~180語/分 | TOEIC リーディングパート 完答/英検1級レベル |
200~250語/分 | ネイティブスピーカー(学生)レベル |
300語/分~ | ネイティブスピーカー(社会人)レベル |
早くペーパーバックを読みたい人は
早くペーパーバックを読めるようになりたい人は、一般的に語彙⇒多読⇒文法(英文解釈)の順番で勉強してください。ただしこの順番は高校までの基本的な文法が頭に入っている人向けです。
ペーパーバックを途中で挫折してしまう一番の理由は、分からない単語が多すぎることです。単語帳などで語彙力を鍛えれば最後まで読める確率が上がるでしょう。
なお英単語の楽な覚え方については以下の記事も参考にしてください。
私も以前、ブッカー賞最終候補「Exit West」に挑戦しましたが、単語が難しすぎで途中でストーリーを追うことができなくなってしまった経験があります。その後英検対策として「出た単」や「究極の英単語」にて単語を覚えてから再挑戦した結果、なんとか最後まで読むことができました。
単語をある程度暗記できた人は、早速ペーパーバックを読んでみましょう。もしどうしても読み取ることが出来ない文に頻繁に出会う場合は、上級者向けの文法(英文解釈)の本を勉強することをおすすめします。
まとめ
ペーパーバックを読むためには、一定の語彙、文法、読解速度が求められますが、英検準1級レベルのリーディング力があれば、児童書や簡単なビジネス書なら何とか読むことが出来るでしょう。しかしながら難易度が高い社会人向けのペーパーバックを早く読めるようになるには上級レベルの語彙や英文解釈のトレーニングが必要になります。
ペーパーバックへの道は中々遠いように感じるかもしれませんが、様々なレベルやジャンルから自分に合うものを選ぶことが出来るため、英語力に自信がある人はぜひ一度試しに読んでみることをおすすめします。