英検に出題される句動詞(イディオム)は暗記しなくても推測で正解できるか検証してみた。【1級・準1級対策】

英検1級や準1級を受験する予定の方には以下のような悩みや焦りを持つ人も少なくはないと思います。

超焦る受験生
超焦る受験生

英単語を覚えることに時間を使いすぎて、句動詞を全然覚えてない…
これでは試験本番に間に合わんぞ!

今回はそのような人に向けて、句動詞の意味を知らなくても、句動詞に含まれる動詞の意味や前置詞のコアイメージから正解を絞り込むテクニックについて解説します。

試験まで時間が無い人や暗記が苦手な人には役に立つ情報となるに違いありません。

英検で出題される句動詞とは?

句動詞とはlive up tofend offのように動詞と前置詞や副詞もしくはその両方が組み合わさって一つの意味になるイディオムのことです。

2024年度現在は1級・準1級共に4題のみ出題されており、英単語の出題と比較すると設問の数が非常に少なくなっております。(他の級にも出題されることもあります。)

そのため英単語の暗記のように時間を掛けられる人は多くありませんし、そもそも句動詞なんてわざわざ暗記をしたくない受験者もいるはずです。

句動詞は意味が推測できる?

一方で句動詞は構成要素である動詞が持つ意味や前置詞の持つコアイメージからその意味をある程度予想できると言われています。

コアイメージとは前置詞そのものがもつ基本的な意味のことを示します。

例えばget up(ベッドから起き上がる・増大する・着飾る)に含まれる”up”には「上を向く」というコアイメージがあることから、何となく人がベッドから立ち上がる想像が出来るのではないでしょうか。

一方動詞の持つ意味ですが、例えば1級でよく出題されるgang up on(集団で攻撃する)と言う句動詞では、gang(ギャング)の何となくのイメージを理解していれば、何かみんなで悪い事をするような意味があるのではないかと予想することができるでしょう。

つまり4択問題で出題される英検であれば、句動詞自体の意味を知らなくても動詞と前置詞の意味を知っていれば、選択肢を絞り込むことが出来る可能性があるのです。

そこで当記事では、実際に英検の過去問を使って、登場する句動詞の意味を一つも知らなくても、推測で正解にたどり着くことができるか検証してみました。

推測だけで英検の過去問は正解できるか確認してみた

ここからは実際の過去問を使って、句動詞の意味を知らなくても、動詞や前置詞から推測して問題に正解できるかどうか確認してみましょう。

準1級の句動詞問題

Late last night, a man was caught trying to ( ) a convenience store, The police forced him to drop his weapon and arrested him.

1 shrug off 2 sit out 3 run against 4 hold up

2023年第1回英検準1級 大問1(22)より引用 
解答はこちら
4 hold up「強盗する」
shrug off 「軽くあしらう」sit out「参加しない」run against「対立する」

夜遅くに男がコンビニに何かをしようとしたが、警察によって武器を捨てるように言われ、最後は逮捕されるという内容です。

もちろん何をしたかと言えば「強盗した」他にないでしょう。

ここで各句動詞についている前置詞のコアイメージを確認してみましょう。

1つ目の選択肢のshrug offの「off」には「離れて」というコアイメージがあります。強盗をするのに何かから離れるのはちょっと不自然かもしれません。

2つめの選択肢sit outの「out」には「中から外に出る」というコアイメージがあります。犯人はコンビニに入ろうとしているので意味が逆ですね。

3つ目の選択肢run againstの「against」は「背く」というコアイメージがありますが、コンビニと敵対するというのはここでは意味が合いません。

すると正解は4のhold upが当てはまると推測できるでしょう。ちなみにhold upは店員を銃で脅して「手を挙げろ」と言うことから「強盗する」という意味になったと言われています。

他の問題も見てみましょう。

A:Our company allows employees to wear comfortable clothes, as long as they don’t look too unprofessional.
B: That’s new for me. Wearing casual clothes was ( ) at my last job.

1 frowned upon 2 carried on 3 entered into 4 crossed off

2023年第2回英検準1級 大問1(24)より引用
解答はこちら
1 frown upon「眉をひそめる」
carry on 「続行する」enter into「入学する」cross off「線で消す」

Aさんが私たちの会社ではプロ意識に欠けるものではなければ快適な服装で大丈夫と言っており、それに対しBさんがカジュアルな服装は前の職場ではよく思われていないと言いたいと推測できます。

つまり「(人から)よく思われていない」という意味の句動詞を選ぶわけですが、先ほどの問題と異なり前置詞のコアイメージで判断することは難しいと思われます。

このような時は動詞が持つ意味を確認する必要があります。frownが「眉をひそめる」という意味であることを知っている人はすぐに答えが選べますが、frownの意味を知らない人でもcarryやenterそしてcrossだと何となく意味が合わないことが予想できるのではないでしょうか。

1級の句動詞問題

準1級と同じ方法が1級の過去問で通用するか見てみましょう。

Martina and her husband ( ) their daughter. They give her continuous praise and buy her just about anything she wants.

1 gear up 2 lay into 3 dote on 4 root around

2022年第3回英検1級 大問1(23)より引用
解答はこちら
3 dote on「溺愛する」
gear up「準備する」lay into「非難する」root around「探し回る」

マルティナ夫妻は娘を「溺愛して」おり、いつも褒めたり、娘が欲しいものをなんでも買ってあげているという文章ですね。

一方前置詞のコアイメージを見るとupやaroundは「誰かを溺愛する」という意味とあまり合いそうにありません。intoも「中に入る」というイメージがあるため、ここではonの方がより適切な選択肢だろうと何となく想像できる人もいたことでしょう。

よって3番の”dote on“が正解であると絞り込めるのです。

ちなみdoteの意味を知っていれば一発で正解を選べますが、知らないとlay intoとどちらにするか迷う人もいると思います。

他の問題も見てみましょう。

Sylvia made her post-graduation plans sound complicated and ambitious, but they really () moving back home to live with her parents and looking for a job.

1 faced up to 2 crept up on 3 boiled down to 4 bore down on

2023年第2回英検1級 大問1(23)より引用
解答はこちら
3 boil down to「という結論にたどり着く」
face up to「毅然と立ち向かう」creep up on「忍び寄る」bear down on「押さえつける」

シルビアは卒業後に複雑で野心的な計画を抱いていたが、結局実家に帰って仕事を探すことにしたという内容です。1級らしく二重前置詞が含まれる句動詞が並んでいます。

一つ目の前置詞はupかdownですが、文章の意味的に「実家暮らしに落ち着く」と言う意味に近いのはdownではないでしょうか?

またfaceが「直面する」creepが「忍び込む」bearが「我慢する」と言う意味であることを考えれば、選択肢から外すことが出来ると思います。

よって消去法を用いて3番の”boil down to“を選べるでしょう。

boil down toから即座に意味を推測することは難しいですが、動詞と前置詞の意味を考えることで消去法が使え、正答率を上げることが出来るでしょう。

前置詞が持つコアイメージを復習しよう

ここまで前置詞のもつコアイメージを活用して問題を解いてきましたが、以下に主要な前置詞のコアイメージをまとめましたので、今一度復習してみましょう。句動詞問題を解くための大きなヒントになるかもしれません。

前置詞 コアイメージ 句動詞の例 備考
in 空間の内部にいる。 cave in 空間の大小は問わない
into 対象物が空間の中に入る。 tap into  
at ある一点にいる。 laugh at 句動詞の数は少ない
to 目的物に向かって到着する。 get down to  
on 平面に直接接している。 bank on  
off 元の場所から離れる。 tell off  
out 中から外に出る、出される。 leave out  
up 起点から上に向かう。 flare up  
down 起点から下に向かう。 buckle down  
前置詞 コアイメージ 句動詞の例 備考
of 何かに属している  
by 対象と差がある。 go by  
over 対象を飛び越えて反対に行く。 take over  
above 基準より高い所にある。 get above oneself 句動詞の数は少ない
below 基準より低い所にある。 drop below 句動詞の数は少ない
under あるものの下にある。 get under  
across 平面を横切る。 come across  
through 立体物を横切る。 pass through  
with と共にある。 live in with  

過去1年分の出題について分析

過去1年間に実際に準1級と1級で出題されたその他の句動詞についても、動詞や前置詞のイメージから推測だけで何割程度正解できるか分析してみました。

準1級

準1級の場合、時々紛らわしい選択肢も含まれていますが、動詞の知識と前置詞のコアイメージを駆使することで、句動詞自体の意味を知らなくても7割以上正解できると思われます。

※推測の難易度について ⇒ ◎…容易に推測できる ○…推測しやすい △…推測しにくい

問題 正解 日本語訳 難易度 考え方
2023-3(22) die away 消える die=消える のイメージ
2023-3(23) pin down 突き止める 原因にピンを指すイメージ
2023-3(24) measure up to に達する up to(~まで)のコアイメージから推測できる
sum upと迷う可能性あり
2023-3(25) draw back 退く、たじろぐ 吠えられてbackするイメージ
2024-1(15) feel for 同情する 相手の気持ちをfeelするイメージ
2024-1(16) get down to 取り掛かる toのコアイメージからビジネスという目的を目指すと考える
2024-1(17) put forth 力を発揮する 力(フォース)を押すイメージ
スターウォーズ好きなら簡単?
2024-1(18) stuck up for 支持する stand up forを知っていれば推測しやすい
2024-2(15) give away 秘密を漏らす 情報をgiveしてしまうイメージ
2024-2(16) live up to 期待に応える up to(~まで)のコアイメージから推測できる
2024-2(17) sail through 容易にこなす throughのコアイメージから難しいものを通過すると考える
2024-2(18) win over 魅了する overのコアイメージから対象全体に覆いかぶさる感じ

1級

1級の場合、句動詞に含まれる動詞の意味自体が難しいため準1級と比較して前置詞のコアイメージから意味を推測する能力が重要です。句動詞自体の意味を知らない場合でもコアイメージからなんとか5割以上正解したいところです。

※推測の難易度について ⇒ ◎…容易に推測できる ○…推測しやすい △…推測しにくい

問題 正解 日本語訳 難易度 考え方
2023-3(22) bow out 手を引く outのコアイメージから
2023-3(23) rifle through 荒々しく探す さまざまな物を通過するイメージだが想像はしにくいか
2023-3(24) hinge on 次第 onのコアイメージやdepends onなどから想像できる
2023-3(25) fire away 質問を始める 出題の仕方から意外と正解しにくいと思われる。
2024-1(19) peter out 消え失せる outのコアイメージから何かが無くなると考える。
2024-1(20) butt in 割り込む inのコアイメージから何かに入り込むと考える。
2024-1(21) stand in 代役を務める standと動詞の意味から推測できる
2024-1(22) put in for 応募する inのコアイメージから
2024-2(19) hail from 出身である hailは難しいが、fromのコアイメージから推測可能
2024-2(20) palm off 欺く 手の平から離れる=欺くと想像することは困難である。
2024-2(21) vouch for 保証する vouchという単語を知っているか否かに依存する
2024-2(22) worm out of 逃げ出す 虫が体をよじって逃げだすイメージ

句動詞は暗記しなくても本当に良いのか?

今回の記事で説明したことをまとめると以下の通りになります。

準1級⇒句動詞の意味を知らなくてもコアイメージから7割以上正解することができる。時間が無い場合は英単語の暗記優先でも合格できる可能性がある

1級⇒句動詞の意味を知らないと推測だけで7割以上正解することは難しい。しかしながら前置詞のコアイメージを駆使することで選択肢を絞り込める。句動詞を覚える時間が無い場合は問題演習を通してコアイメージを駆使する練習をする方がよい。

今回は句動詞を覚えなくても動詞と前置詞の持つ意味を駆使することで、ある程度推測で正解できることを検証しましたが、これは句動詞を一生勉強しなくても良いことは意味しません。

句動詞は英会話の中で頻繁に使う表現の一つであり、ドラマや映画でもよく登場します。ネイティブスピーカーや帰国子女に話を聞くと、1級レベルの英単語は英会話であまり使わないけど、1級レベルの句動詞は頻繁に使うと語る人が多いです。

試験対策の面では、単語を暗記する方がより得点に直結することは間違いないですが、最終目標として英語を使いこしたい人や英語を話せるようになりたい人にとっては、句動詞を避けて通ることはできないでしょう。

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