英検に出題される句動詞(イディオム)は暗記しなくても推測で正解できるか検証してみた。【1級・準1級対策】

英検1級と準1級の大問1の最後に出題されている問題と言えば「句動詞」があります。

句動詞とはlive up tofend offのように動詞と前置詞や副詞もしくはその両方が組み合わさって一つの意味になるイディオムのことです。

2023年度現在は1級・準1級共に4題のみ出題されており、英単語の出題と比較すると設問の数が非常に少なくなっております。(他の級にも出題されることもあります。)

そのため英単語の暗記のように時間を掛けられる人は多くありませんし、そもそも句動詞をわざわざ暗記をしたくない受験者もいるはずです。

また句動詞は構成要素である動詞が持つ意味や前置詞の持つコアイメージからその意味をある程度予想できると言われています。

コアイメージとは前置詞そのものがもつ基本的な意味のことを示します。

例えばget up(ベッドから起き上がる・増大する・着飾る)に含まれる”up”には「上を向く」というコアイメージがあることから、何となく人がベッドから立ち上がる想像が出来るのではないでしょうか。

一方動詞の持つ意味ですが、例えば1級でよく出題されるgang up on(集団で攻撃する)と言う句動詞では、gang(ギャング)の何となくのイメージを理解していれば、何かみんなで悪い事をするような意味があるのではないかと予想することができるでしょう。

つまり4択問題で出題される英検であれば、句動詞の意味を知らなくても動詞と前置詞の意味を推測することで選択肢を絞り込むことが出来るかもしれません。

そこで当記事では、実際に英検の過去問を使って、登場する句動詞の意味を一つも知らなくても、推測で正解にたどり着くことができるか検証してみました。

推測だけで句動詞の問題は正解できるか解説

準1級の句動詞問題

英検準1級の過去問において、句動詞の意味を知らなくても問題を解くことが出来るか確認しましょう。

Late last night, a man was caught trying to ( ) a convenience store, The police forced him to drop his weapon and arrested him.

1 shrug off 2 sit out 3 run against 4 hold up

2023年第1回英検準1級 大問1(22)より引用 
解答はこちら
4 hold up「強盗する」
shrug off 「軽くあしらう」sit out「参加しない」run against「対立する」

夜遅くに男がコンビニに何かをしようとしたが、警察によって武器を捨てるように言われ、最後は逮捕されるという内容です。

もちろん何をしたかと言えば「強盗した」他にないでしょう。

ここで各句動詞についている前置詞のコアイメージを確認してみましょう。

1つ目の選択肢のshrug offの「off」には「離れて」というコアイメージがあります。強盗をするのに何かから離れるのはちょっと不自然かもしれません。

2つめの選択肢sit outの「out」には「中から外に出る」というコアイメージがあります。犯人はコンビニに入ろうとしているので意味が逆ですね。

3つ目の選択肢run againstの「against」は「背く」というコアイメージがありますが、コンビニと敵対するというのはここでは意味が合いません。

すると正解は4のhold upが当てはまると推測できるでしょう。ちなみにhold upは店員を銃で脅して「手を挙げろ」と言うことから「強盗する」という意味になったと言われています。

他の問題も見てみましょう。

A:Our company allows employees to wear comfortable clothes, as long as they don’t look too unprofessional.
B: That’s new for me. Wearing casual clothes was ( ) at my last job.

1 frown upon 2 carried on 3 enter into 4 crossed off

2023年第2回英検準1級 大問1(24)より引用
解答はこちら
1 frown upon「眉をひそめる」
carry on 「続行する」enter into「入学する」cross off「線で消す」

Aさんが私たちの会社ではプロ意識に欠けるものではなければ快適な服装で大丈夫と言っており、それに対しBさんがカジュアルな服装は前の職場ではよく思われていないと言いたいと推測できます。

つまり「(人から)よく思われていない」という意味の句動詞を選ぶわけですが、先ほどの問題と異なり前置詞のコアイメージで判断することは難しいと思われます。

このような時は動詞が持つ意味を確認する必要があります。frownが「眉をひそめる」という意味であることを知っている人はすぐに答えが選べますが、frownの意味を知らない人でもcarryやenterそしてcrossだと何となく意味が合わないことが予想できるのではないでしょうか。

準1級の問題を複数確認しましたが、半分以上の問題で動詞の持つ意味と前置詞のコアイメージのどちらかを考えることで句動詞の意味を知らなくてもある程度正答を絞れることが分かりました。

1級の句動詞問題

準1級と同じ方法が1級の過去問で通用するか見てみましょう。

Martina and her husband ( ) their daughter. They give her continuous praise and buy her just about anything she wants.

1 gear up 2 lay into 3 dote on 4 root around

2022年第3回英検1級 大問1(23)より引用
解答はこちら
3 dote on「溺愛する」
gear up「準備する」lay into「非難する」root around「探し回る」

マルティナ夫妻は娘を「溺愛して」おり、いつも褒めたり、娘が欲しいものをなんでも買ってあげているという文章ですね。

一方前置詞のコアイメージを見るとupやaroundは「誰かを溺愛する」という意味とあまり合いそうにありません。intoも「中に入る」というイメージがあるため、ここではonの方がより適切な選択肢だろうと何となく想像できる人もいたことでしょう。

よって3番の「dote on」が正解であると絞り込めるのです。

ちなみdoteの意味を知っていれば一発で正解を選べますが、知らないとlay intoとどちらにするか迷う人もいると思います。

他の問題も見てみましょう。

Sylvia made her post-graduation plans sound complicated and ambitious, but they really () moving back home to live with her parents and looking for a job.

1 faced up to 2 crept up on 3 boiled down to 4 bore down on

2023年第2回英検1級 大問1(23)より引用
解答はこちら
3 boil down to「という結論にたどり着く」
face up to「毅然と立ち向かう」creep up on「忍び寄る」bear down on「押さえつける」

シルビアは卒業後に複雑で野心的な計画を抱いていたが、結局実家に帰って仕事を探すことにしたという内容です。1級らしく二重前置詞が含まれる句動詞が並んでいます。

一つ目の前置詞はupかdownですが、文章の意味的に「実家暮らしに落ち着く」と言う意味に近いのはdownではないでしょうか?

またfaceが「直面する」creepが「忍び込む」bearが「我慢する」と言う意味であることを考えれば、選択肢から外すことが出来ると思います。

よって消去法を用いて3番の「boil down to」を選べるでしょう。

boil down toから即座に意味を推測することは難しいですが、動詞と前置詞の意味を考えると正答率を上げることが出来るでしょう。

その他の1級の問題を複数確認しましたが、準1級と比べて複数の要素を検討しなくてはならなかったり、推測だけでは正解に至ることは難しかったりする出題が多いことが分かりました。

前置詞のもつコアイメージ

ここまで前置詞のもつコアイメージを用いて問題を解いてきましたが、以下に主要な前置詞のコアイメージをまとめましたので、今一度復習してみましょう。句動詞問題を解くための大きなヒントになるかもしれません。

前置詞 コアイメージ 句動詞の例 備考
in 空間の内部にいる。 cave in 空間の大小は問わない
into 対象物が空間の中に入る。 tap into  
at ある一点にいる。 laugh at 句動詞の数は少ない
to 目的物に向かって到着する。 get down to  
on 平面に直接接している。 bank on  
off 元の場所から離れる。 tell off  
out 中から外に出る、出される。 leave out  
up 起点から上に向かう。 flare up  
down 起点から下に向かう。 buckle down  
前置詞 コアイメージ 句動詞の例 備考
of 何かに属している  
by 対象と差がある。 go by  
over 対象を飛び越えて反対に行く。 take over  
above 基準より高い所にある。 get above oneself 句動詞の数は少ない
below 基準より低い所にある。 drop below 句動詞の数は少ない
under あるものの下にある。 get under  
across 平面を横切る。 come across  
through 立体物を横切る。 pass through  
with と共にある。 live in with  

句動詞は暗記しなくても本当に良いのか?

ここまで句動詞を覚えなくても動詞と前置詞の持つ意味である程度正解できることを検証しましたが、これは句動詞を一生勉強しなくても良いことは意味しません。

句動詞は英会話の中で頻繁に使う表現の一つであり、ドラマや映画でもよく登場します。ネイティブスピーカーや帰国子女によれば、1級レベルの英単語はあまり使わないけど、1級レベルの句動詞は頻繁に使うと語る人が多いです。

試験対策の面では、単語を暗記する方がより得点に直結することは間違えないですが、最終目標として英語を使いこしたい人や英語を話せるようになりたい人にとっては、句動詞を避けて通ることはできないでしょう。

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