英語を勉強する目的として外国人との会話やビジネスでの活用を挙げる人が多い一方、新聞など英語で書かれた文章を読みたい人もいると思います。そのような中、皆さんは人生で一度は洋書を読もうと思ったことはないでしょうか?
しかしながら最初の数ページで読むのが嫌になってしまい本棚の肥やしや装飾品になってしまった経験はないでしょうか?
今回はこれから洋書を読みたい皆様が挫折や辛い思いを出来るだけせずに、楽しく読むための方法やおすすめの本の選び方について解説します。

どうして洋書に挫折してしまうのか?
初めての洋書デビューで挫折してしまう理由は、学校で習う英語と洋書との大きなギャップにあります。具体的には以下の4つの理由にまとめられるでしょう。
- とりあえず有名な本に飛びついてしまう
- 分からない単語ばかり登場する
- これまでにない量の英文を読む必要がある
- 本に付いている帯に騙される
理由① とりあえず有名な本に飛びついてしまう
初めて洋書を読む時に一番やってしまいがちな事は、自分の英語レベルを全く考えずにとりあえず有名な本に飛びついてしまうことです。
最も有名な例として「ハリーポッター」が挙げられます。ハリーポッターは日本では知らない人がいないほど有名な本である上、児童書でもあることから読みやすいだろうと飛びついてしまう人が絶たないのです。
「ハリーポッター」で撃沈する人が少なくないのか他のブログでも「初心者はハリーポッターを読むな」などとの記事が書かれています。
ハリーポッターで撃沈してしまう理由としてこれらが挙げられると思います。
- 呪文の名前や作者の言葉遊びが理解できない
- ダンブルドア校長ちょっと何言っているか分からない
- 学校で習わない単語が沢山出てくる
- とにかく長い!読むのに何か月もかかってしまう

これは僕が知らない英単語なのかそれとも呪文の名前なのか?
理由② 分からない単語ばかり登場する
一般的な英語学習者とネイティブスピーカーの間には、知っている単語の量に3倍以上の差があります。
大学受験で必要な語彙数は、共通テストレベルで5000語、難関大レベルで8000語程度である一方、成人のネイティブスピーカーは30000語以上の語彙力があると言われています。
洋書は基本的に現地のネイティブスピーカーのために書かれた本になっています。そのため彼らが楽しめるようにより意味が細分化された語彙が使われている傾向にあります。
例えば”laugh(笑う)”の代わりに場面に応じて”crack up(爆笑する)”、”snigger(忍び笑いする)”、”guffaw(馬鹿笑いする)”などが使われています。
分からない単語があったからと、いちいち辞書を使って調べていては肝心の内容が頭に入ってこないでしょう。

洋書読んでいる時間より辞書調べている時間の方が長い気がする…
理由③ これまでにない量の英文を読む必要がある
洋書を読むということはこれまで読んだことがない量を英文を読むことを意味しています。
大学入試であれば1文章あたり1000語を超えることは稀ですが、洋書では同じストーリーについて短編小説などでも数千語、長編になると1冊で10万語近い文章を読むことも少なくありません。
特に読み始めた直後は話の内容が頭に入っていないため、内容が理解しにくくストレスが溜まりがちです。そしてこの苦行があと何十時間続くのだろうと想像してしまいそっと本を閉じてしまうのです。
逆に中盤あたりまで読むことが出来ればストーリーの流れやよく登場する単語が理解できるので一気に読むスピードが上がります。
洋書に慣れている人はこの事実を理解しているため最後まで読むことが出来るのですが、初心者の場合は面白さに気づく前に挫折してしまいます。

何日も読んだはずなのに、まだ10分の1しか進んでいない
理由④ 本に付いている帯に騙されてしまう
多くの方が述べていますが、本に付いている帯に書かれたレベル(例:TOEIC600点)は実際に読むために必要な英語力と一致していないケースが多いです。
例えばTOEIC600点レベルと表記された本でも実際に読む場合はTOEIC900点相当の実力が必要になるケースも決して少なくありません。
また洋書を読むために必要な知識とTOEICで高得点を取る知識は異なるため、TOEIC900点以上の人でも全く油断できません。

「TOEIC600点レベル」と書いてあるし余裕だろうと
思っていた時が僕にもありました。
洋書デビューを成功させるためのコツを紹介
初めての洋書で挫折しないようにするためには下準備と本選びが重要です。それぞれの項目についてさらに詳しく説明します。
洋書デビューに向けた下準備とは?
初めての洋書で挫折しないために必要な下準備は以下の通りです。
準備① 洋書に出やすい英単語を覚える
先程説明した通り、洋書に登場しやすい英単語はTOEICや英検に登場する英単語とは異なる場合があります。特に具体的な名詞や宗教関係の単語は試験にほとんど出ないため別途暗記が必要になるでしょう。
洋書を読むためにおすすめの単語帳としてアルクの「究極の英単語」シリーズがあります。
究極の英単語シリーズは「日本人英語学習者にとっての有用性」「ネイティブスピーカーの使用頻度」を基準に選び出した、12000語の重要英単語リストを掲載した英単語帳であり、英検やTOEICには出題されにくいが、洋書つまりネイティブの日常生活では頻出する単語も掲載されています。

以下に究極の英単語シリーズに掲載されている英単語の中から洋書で登場しそうな単語をいくつか紹介します。
究極の英単語シリーズに掲載されている英単語の例
ass ロバ、ばか、頑固者
damn 地獄に落とす、酷評する、ののしる
whirl ぐるぐる回る、渦巻
dove 鳩、可愛い人
moor 荒地、沼地
toad ガマガエル
これらの英単語は試験では出題されにくいですが、洋書では見かける可能性が高い英単語です。日常会話でもよく使うためネイティブスピーカーであれば小学生でも知っている単語です。このような英単語を覚えることが洋書を読むための第一歩となります。
ハードルはかなり高いですが、究極の英単語のVol.4まですべて覚えることが出来れば洋書で分からない単語ばかりになることが少なくなる上、英検やTOEICの語彙で苦労することもほぼ皆無になるでしょう。
なお洋書には句動詞や慣用表現も登場しますが、ドラマや映画と比較して出現頻度は少なめなので覚える優先度も高くありません。知らない表現があればその都度記録するくらいが丁度良いでしょう。
準備② これから読む洋書の下調べを行う
先程述べた様に洋書を読むためには下調べが重要です。Amazonにおける紹介文やコメントを確認して本の概要や登場人物をあらかじめ調べておきます。また背景知識や作者についても簡単に調べても良いでしょう。
またChatgptに「○○(著者:△△)のあらすじと主な登場人物について教えてください。」と質問することで、洋書であってもかなり正確な情報を手に入れることができます。
Youtubeにおいてもその本の概要について紹介した動画がアップロードされている場合があるため確認しておきましょう。
洋書を読む前に下調べの方法
- 登場人物やあらすじをあらかじめ確認する
- 背景知識(歴史や文化)を簡単に調べる
- 本のレビュー記事や動画を見る(英語で検索する方がよい)
準備③ 分からない部分があっても無視できるメンタルを身に着ける
洋書はたとえすべての英単語の意味が理解できたつもりでも肝心の内容が理解できない場合があります。それは背景知識の不足や作者の言葉遊びを理解できていないことが原因になっています。
このような場合、もちろん理解できるまで調べることも重要ですが、洋書の多読という意味では完璧に理解することをあきらめて一旦最後まで読む心掛けも必要になります。
大学受験や試験とは異なり文章の隅々まで内容を把握する必要はありませんので、7割ぐらい理解できればOKという心構えで全く問題ありません。
洋書デビューにおすすめの本の選び方
ここからは洋書デビューにおすすめな本の選び方についてします。共通点としては初見の大人向けの難しい洋書は避けて、学習者向けの洋書や児童書、すでにストーリーを知っている洋書を選ぶことです。
おすすめ① 学習者向けの洋書(語彙制限本)を読む
初心者に一番おすすめしたい洋書はラダーシリーズなどの学習者向けの洋書(語彙制限本)です。これらの洋書は原作と比較して難しい単語が簡単な単語に置き換えられていたり、使用される文法が制限されていたりするため、多くの英語学習者の方が読みやすい構成になっています。
また原作にはない登場人物の紹介や挿絵、英単語のリストなどが含まれていることがあり、洋書初心者にとって大きな助けになっています。
文章の量も数百語~5000語程度と原書と比較してかなり少ないので最後まで読みやすくなっています。
学習者向けの洋書の大きな欠点として文章の量に対して本の価格が高いということです。特に新品を購入する場合は50ページほどの薄い本でも800円以上かかる場合も少なくありません。
出来るだけ安く手に入れるために、BOOKOFFなどの古本屋を利用する(1冊110円~)またはメルカリなどで複数冊のセットを購入することをおすすめします。
ラダーシリーズを読む段階において最も必要な要素は洋書に慣れることです。そのため一冊一冊吟味して楽しむより様々な種類の本を読む経験を積むことが大切です。

※価格については文章の量や本の状態、希少性などにより大きな差があります。
おすすめ② 比較的易しめの洋書を選ぶ
おすすめ①で紹介した学習者向けの洋書に慣れた人は簡単な洋書(読みやすさレベル(YL)5以下を推奨)に挑戦することをおすすめします。洋書に慣れたと言えるのは一般的に30万語を超えたあたりになります。
比較的読みやすい洋書の例(YL5以下)
- Who Moved My Cheese? チーズはどこに消えた?
- Diary Of A Wimpy Kid グレックルのダメ日記
- Kira-Kira きらきら
おすすめ③ 日本語で読んだことがある作品を読む
最初に取り上げた「ハリーポッターシリーズ」においても、一度日本語版の小説を一通り読んだことがある方は挑戦してみてもよいかもしれません。なぜならば登場人物や大まかなストーリーは理解しているため、分からない部分があっても想像で補完できる上、万一理解できなければ日本語版と照らし合わせることが出来るからです。
おすすめ④ 対訳や解説が付いている洋書を選ぶ
有名な洋書の中には対訳や解説が付いている本があります。主な洋書として「星の王子さま」や「動物牧場」があります。洋書以外にもキング牧師やオバマ元大統領のスピーチの対訳本も出版されています。
また著作権が切れた古い洋書についても対訳付きで解説しているサイトがあります。これらのサイトを使えば無料で洋書を楽しめる他、理解できないところがあっても日本訳を見ることが出来るので、挫折してしまうリスクを限りなく無くすことができるでしょう。
まとめ
ここまで洋書を読む前の準備(英単語学習や下調べ)および初心者におすすめしたい洋書の選び方について解説しました。しかし最後は一度本屋さんで数ページ読んでから買うことをおすすめします。
最初の数ページを読んでみて全くストーリーが頭に入らない場合や知らない単語が1ページに3個以上登場する場合には、残念ながら今の英語力に対して洋書が難しすぎる可能性が高いです。
皆様が自分にあった初めの一冊を選び、快適な洋書多読ライフを送れることを願っています。