英検を受験する受験生が増加中!しかし…
近年では、大学受験において英検は無視できない存在になっています。
英検の級やCSEスコアが出願資格や加点の対象になる大学が増えているため、多くの受験生が英検を受験するようになっているのです。
しかしながら英検に合格した受験生の中には、なぜか大学受験が上手くいかなくなってしまったケースも報告されています。
大学受験を有利に進めるために英検に合格したにもかかわらず、肝心の受験に成功しない事例にはどのような理由があるのでしょうか?
当記事では”英検が抱える弱点”や”英検と大学受験との違い”から、英検に合格しても大学受験で安心してはいけない理由を解説します。
英検に合格しても安心してはいけない理由3選
受験生が英検に合格しても安心してはいけない理由は大きく分けて以下の3点です。
- 合格後に油断してしまうから
- 英文法の力が弱い
- 共通テストや一般入試の問題に対応できない
それぞれの理由についてもう少し深堀りしてみましょう。
① 合格後に油断してしまうから
目標とする級に合格した後油断してしまい、他の科目の勉強や共通テスト・一般入試に向けた英語の勉強について手を抜いてしまう受験生も少なくないようです。
英検準1級に合格したことだし、MARCHくらい余裕でしょ(笑)
一つの事例として、塾講師YouTuber「マスクド先生の大学受験チャンネル」では、高校3年生で準1級に合格した男子生徒が気を緩めてしまったため、英検が有利に働く立教大学を除いて、すべての受験校に落ちてしまった事例が紹介されていました。
またネットニュースやマスクド先生が塾講師を対象に集めたアンケートにおいても、近年の英検利用に懐疑的な見方をする塾講師が数多くいることが見受けられます。やはり英検の結果に惑わされてしまう受験生が少なくないからではないでしょうか。
② 英文法の力が弱い
英検に特化して勉強した人の弱点として文法力の弱さが挙げられます。
実は英検には直接文法の能力を問う出題がほとんどありません。特に2級以上では大問1においても語彙や熟語の知識を問う出題がほぼすべてを占めています。
過去2級に出題された文法問題も難関大学の入試と比較すれば基本事項の確認レベルであり非常に易しい内容です。※2級では2024年度第1回より文法力を直接問う問題は出題されません。
こちらは英検2級で出題された文法問題の例です。
A: Mom, can I go to the park to play with Jimmy later?
B: Yes, ( ) you finish your homework first.1 provide 2 provided 3 to provide 4 only provide
英検2級 2023年度第1回検定
内容自体は高校英文法の中でも比較的高度ですが、条件を示すIfの代わりにProvided (that)が使えることを知っていればすぐに正解することができると思います。
英作文でも多少文法力が求められていますが、ある程度テンプレート化されている部分もあり、準1級までならば中学で習う文法しか使わなくても、それなりの得点を稼ぐことができます。
そのため英検だけを目標に英語を勉強している人の中には、2級や準1級に合格したにもかかわらず、しっかりした文法の基礎を築くことが出来ていない方もいるのです。
③ 共通テストや一般入試の問題に対応できない
英検と共通テストや一般入試の英語の問題は、形式が異なる部分が多く見受けられます。
例えば共通テストでは複数の資料を読み比べたり、段落をすべて読んだりしないと間違った選択肢を選んでしまう、いわゆるひっかけ問題が多数出題されています。
一方英検の長文問題は、基本的に1つの段落に1つの問題が対応しているので、共通テストと比較してかなり素直な出題になっています。
また一般入試においては仮定法や比較の慣用表現などの細かい文法事項を問う設問や英文和訳など英検にはない出題が見られます。
大学入試は基本的に受験生を選抜する目的で作成されていますので、現時点の英語力を確認する目的の英検と比較して意地悪な出題になるのは当然のことです。
英検に合格した受験生が行うべきこと
これまで英検合格者に向けた注意点について説明しましたが、次に英検に合格した受験生がこれからすべきことについて解説します。具体的には以下の3点になります。
- 英検の活用方法を決める
- 文法問題の演習を行う
- 英文の意味が理解できているか確認する
これらすべきことについてもさらに詳しく見ていきましょう。
① 英検の活用方法を決める
まず第一に英検さえ合格していれば受験は安泰になりそうだと曖昧に考えるのではなく、どの大学の何の形式を利用するのか具体的に考えておくことが重要です。
文系においては、日東駒専やMARCHを中心に英検取得が有利に働く入試方式が数多く採用されています。
例えば明治大学の国際日本学科の学部別入試方式では、英検準1級以上が出願資格となっており、個別試験であれば国語の点数のみで合否が決まります。また倍率も2024年度入試で2.0倍と低く、他の形式と比較してライバルが少ない状況となっています。中央大学国際情報学部も似たような受験形式を採用しています。
一方理系では英検が有利に働く有名大学はあまり多くありません(東京情報大学など一部除く)。
芝浦工大などは一定以上のCSEスコア(準2級または2級相当)を持っている人を対象に数学と理科の2科目のみの受験できる方式を採用しています。また東京理科大学ではグローバル方式入試(数学150点+理科150点+英語資格加点0~25点)を採用しています。
いずれの大学も出願資格の基準は決して高くなく、英検利用入試が特別有利であるわけではありません。メリットとしては当日の英語の個別入試で失敗するリスクをなくすことができることくらいです。
文系・理系どちらにおいても、自分が大学で学びたい内容や英語以外の科目の得意不得意を照らし合わせて、どの受験方式であれば有利に働くのか早いうちに考えておくことが重要です。
志望校によってはこれ以上英検の勉強をするべきではないという結論に達する可能性も大いに考えられることでしょう。
② 文法問題の演習を行う
先ほど述べた通り、英検合格者の中には英文法の力がかなり弱い方も少なくありません。
一方で一般入試で難関私大の英語を受験する予定であれば、入試に対応できる文法力の強化は必須です。また難関国公立大でも重量感のある英作文や和訳を課す大学も少なくありません。
英検準1級に合格した受験生であっても、難関大学の一般入試の英語に対応できるレベルにあるとは限らないので、やはり志望校を意識した対策が必要です。
文法力に不安がある人は一度“Next Stage”などの汎用的な文法問題集を解いてみることをおすすめします。
時間がない人は”東進 英文法 レベル別問題集“や”関先生の英文法ファイナル問題集ポラリス”など薄めの文法問題集でも問題ありません。
文法の力を伸ばしておくことは、入試で必要なばかりではなく、大学入学後にTOEICやIELTSなど別の英語試験を受ける場合や英会話で高度なディスカッションを行いたい時に非常に大切です。
③ 英文の意味が理解できているか確認する
大学入試では英検と比較して英文の深い部分まで理解できているか問われる場合が多いです。設問に紛らわしい選択肢が多かったり、正解の根拠となる箇所がバラバラであったりしています。そのため英検と比較してより高い英文の読解力が求められます。
もしあなたが長文の問題を解いたあとに日本語訳を見たときに、自分が読み取った内容と差が大きいと感じた時は黄信号です。
そのような時は必ず自分が読んだ英文の意味を理解できなかった理由を調べてください。調べ方としては以下の方法がおすすめです。
①理解できなかった部分をインターネットや生成AI(ChatGPTなど)で検索する。
②検索結果から、知らなかった英単語や文法事項を整理する。
③知らなかった英単語は出来るだけ例文付きで覚える。
④知らなかった文法事項はEvergreenなどの文法書で調べてみる。
(例:条件を示すif以外の接続詞providedが分からなかった⇒接続詞のページを確認)
⑤文法書で派生した内容も含めて覚える。
(例:provided以外にもin case、supposingなどが使えることを覚える)
大変かもしれませんが、上記のプロセスを経て勉強する方が大学入試でも十分通用する高い理解力を習得することができます。
間違っても長文問題を解いて丸付けしてそのままにするような勉強方法ではいけません。
まとめ
ここまで英検に合格した受験生が油断してはいけない理由とその対策について解説しました。もちろん英検を受験することは大学入試においても日頃の英語学習のモチベーションアップにおいても素晴らしい効果を発揮することでしょう。
当記事で、英検を入試に戦略的に活かすことの重要性や英検の弱点とその穴埋めについて理解することが出来れば、より他の受験生と差をつけることができるでしょう。